外国人材の受け入れを検討する企業担当者から、「特定技能と技能実習の違いがよくわからない」という声がよく聞かれます。名称が似ているうえに、対象職種が重なる分野も多いため、混同されやすい制度です。さらに2027年4月からは技能実習制度そのものが廃止され、「育成就労制度」という新しい制度に置き換わることが決まっています。ここでは両制度の違いを整理したうえで、この制度変更の内容と実務への影響を解説します。
制度の目的が根本的に異なる
技能実習制度は、開発途上国への技能移転による国際貢献を目的として1993年に始まった制度です。建前としては「日本で学んだ技能を母国に持ち帰ってもらう」ための仕組みであり、労働力確保を目的とした制度ではないとされてきました。一方で特定技能は、国内の人手不足分野を補うことを明確な目的として2019年に創設された在留資格です。
この目的の違いは、実務上の扱いにも表れています。技能実習では受け入れ企業に対して「指導」「育成」という位置づけが求められる一方、特定技能では即戦力人材の雇用という位置づけになります。技能実習生が試験なしで一定の実務経験を積むルートである一方、特定技能は技能水準・日本語水準を試験で確認したうえで在留が認められる仕組みです。ただし技能実習を良好に修了した人は、試験免除で特定技能1号に移行できるルートも用意されており、両制度は接続する形で運用されてきました。
この「建前と実態の乖離」——国際貢献を掲げながら実質的には労働力供給の役割を担ってきたこと——が、後述する制度廃止の背景になっています。
転籍(転職)の可否が最大の実務上の違い
企業の受け入れ担当者にとって最も影響が大きいのが、転籍(転職)に関する規定の違いです。技能実習では原則として同一の受け入れ企業のもとで実習期間を全うすることが求められ、転籍は「やむを得ない事情がある場合」に限定されてきました。実習生本人の意思による転職はほぼ認められない仕組みだったといえます。
これに対して特定技能では、同一分野内であれば転職が可能です。人材本人が労働条件や職場環境に不満を持った場合、他の受け入れ企業に移ることができるという点で、労働者としての権利が技能実習よりも保障されている制度設計になっています。
在留期間にも差があります。技能実習は技能実習1号・2号・3号を通じて最長5年、特定技能1号は通算5年、特定技能2号は上限がなく家族帯同も可能です。この段階的な移行(技能実習→特定技能1号→特定技能2号)を見据えたキャリアパス設計が、外国人材の受け入れ計画を立てるうえで重要な視点になります。
技能実習制度は2027年4月に廃止される
2024年6月、技能実習制度を廃止し新たに「育成就労制度」を創設するための改正入管法・育成就労法が成立しました。施行日は2027年4月1日です。技能実習制度に長年指摘されてきた失踪者問題や人権侵害のリスクを受けて、制度の抜本的な見直しが決定した形になります。
育成就労制度の設計思想は、技能実習と特定技能の間にあった断絶をなくすことにあります。対象職種・分野を特定技能の分野と一致させ、育成就労での就労がそのまま特定技能1号へのステップになるよう整理されています。在留資格は「育成就労」となり、在留期間は3年です。この3年間で技能・日本語水準を満たせば、特定技能1号への移行が可能になります。
最大の変更点は転籍要件の緩和です。技能実習では原則禁止だった本人都合の転籍が、育成就労では同一機関で1~2年勤務した後であれば原則として認められる方向で制度設計されています。受け入れ企業側から見ると、人材の定着に向けた職場環境の改善がこれまで以上に重要になるということです。監理団体という呼称も「監理支援機関」に変わり、受け入れ企業に対する監督機能の強化が図られています。
移行期間中の実務対応
施行日の2027年4月1日以降、技能実習制度の新規受け入れはできなくなりますが、施行日時点で在留中の技能実習生については、実習期間の満了まで従来の技能実習として継続される見込みです。修了後は本人の希望に応じて育成就労または特定技能への移行が可能とされ、技能実習での経験は特定技能の評価においても考慮される方向で調整が進められています。
制度移行に向けた準備は2026年中から段階的に始まっています。監理支援機関としての許可申請や、育成就労計画の認定申請といった施行日前の手続きがすでに受付開始となっている項目もあり、現在技能実習生を受け入れている企業、これから受け入れを検討している企業のいずれにとっても、早めの情報収集と体制整備が必要な局面に入っています。
対象職種の見直しも進んでおり、これまで技能実習で受け入れが可能だった職種の一部(印刷関連など)が、育成就労制度では対象外となる可能性が指摘されています。現在受け入れている職種が新制度の対象分野に含まれるかどうかの確認は、早い段階で行っておくべき作業のひとつです。
まとめ
特定技能と技能実習は、目的・転籍可否・在留期間のいずれにおいても異なる制度設計になっていますが、技能実習→特定技能という接続を前提に運用されてきた点は共通しています。2027年4月の育成就労制度への移行によってこの接続はより明確になり、転籍要件の緩和という形で人材本人の権利保障も強化される方向に進んでいます。受け入れ企業にとっては、従来の「実習生を囲い込む」発想から、「選ばれる職場であり続ける」発想への転換が求められる制度変更だといえます。
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